一、喫茶店
ギャグまんがを描いている(「外は!」シリーズ)。その次回作の舞台を、喫茶店にしようと思った。背景作画のために「取材」をしようと考えて、大阪の喫茶店を調べるうち、いわゆる「純喫茶」系喫茶店に引き込まれていった。もともと個人のお店が苦手で、旅行先でもマクドナルドやサイゼリヤで過ごし、レトロなお店を外から撮影しても、中には入らないから友人にも揶揄されるくらいだったのだが、「取材」の名目が持てたせいかドアを押し開ける勇気を持つことができた。
今行っている個人店はおじいさんとおばあさんが夫婦でやっているようなお店が多く、建物やビルの老朽化もあって、実際、この1年でもいくつかのお店の閉店に遭遇した。これから数年で日本が大きく変わっていくことは間違いないけれど、名残を惜しむ気持ちで、毎月何軒か、昭和の喫茶店を訪れている。
二、SNS
2024年6月ごろ、精神が落ち込んだ。仕事の状況が良くなかったり、趣味で描いているまんがやイラストの進捗が悪かったり、その出来が満足いかなかったり、ほかにもいろいろなことが重なり完全に袋小路に入り込んでしまった。
そういうときSNSを見るのは良くないのだが、意思が弱いので、あれば見てしまうし、しばらく離れたりもできない。精神状態が浮き上がった時ツイートして、落ち込んだ時そのツイートが醜く見える。その繰り返しを続けて最終的にアカウントごと7月に削除した。その後アカウントも作らなかったし、だれのツイートも読ま(め)なくなった。今振り返ると、SNSで論争や感情を見ることは自分の想像以上に、精神状態に影響を及ぼしていた。その内容に関心があるか否か問わず、「他者」を感じること自体が負担だったのだ。たぶん、自分に芯のようなものがないから、見るもの全部に影響されてしまうのだろう。
それからはツイッターも、テレビも新聞も見ないので、いわゆる「ニュース」がまったく分からなくなった。
三、『ぼっち・ざ・ろっく!』
『ぼっち・ざ・ろっく!』という4コマまんがとアニメがある。その画像をツイッターで(まだやっていたころ)見て、かわいい、と思った。LINEスタンプを使いたくなった。私は乙女座のA型なので、スタンプはちゃんと原作を把握してから使う。4コマまんが6冊を読み、Amazon Prime Videoでアニメ全12話を見終えたころ、完全に、心を奪われていた。キャラクター同士の関係性がとても良く、主人公が参加しているバンド「結束バンド」のメンバー4人が4人ともみんなどう組み合わせても、それぞれの繋ぎ目があり、こんなシチュエーションが良いな、と、創造性を刺激される。アニメ版のキャラクターデザインを担当された「けろりら」さんの絵に魅せられたのもポイントだった。
今までの人生でハマってきたもののほとんどは、自分の生前に流行っていたもの(スーパーカーとか80年代のファッションとか)だったので、下北沢に「聖地巡礼」に行ったり、大阪の「ぼっち・ざ・ろっく! 展」を訪ねたり、新刊を買ったり、作品のリアルタイムを追いかけられるのがほとんど初めての経験で、小さなことがうれしかった。
四、絵
やがて、ぼざろのファンアートを描きたいと思い始めた。そのとき必要になるのが「アニメ絵」「萌えイラスト」のスキルである。かわいい女の子を描くのは昔から好きだったが、これまで影響を受けたのは町田ひらく先生や望月峯太郎先生、高野文子先生らの絵柄で、いわゆる「アニメ絵」を私はほとんど描いたことがなかった。そして「アニメ絵」というのは、かなり独自のスキルである。
過去にも「人体デッサン」とかパースとか、好きな絵柄の模写のような絵の練習はしたことがあったけれど、そういう「アニメ絵」の練習はできていなかったため、今年から集中して取り組み始めた。まだまだ全然、上手く描けなくて「アー!」となっているが、前には進んでいる、と思う。
左が2024夏で右が2024冬(BTR二次創作)。ちょっとは上手くなってるかな……ちょっと……。長期目標で頑張ります。
五、来年
2024年はSNSをやめて、BTRに出会い、そのおかげで改めて絵に向き合うことができた年だった。今まで描いて来た自分のまんがや絵は好きだが、やはり絵が下手だったり、コマ割りが下手だったり、問題点も多かった。もしSNSをやめることなく(これはそのままの意味というよりは、もっと全体の精神性のような意味なのだが)進み続けていたら、そうした問題点を直す機会を失い、「これがでも私の絵だ!」とか「私のやり方はこれなんだ!」と、世界と自分に言い訳をしていた気がする。
精神状況こそボロボロになったが、なんとか踏みとどまれたし、その間に自分の絵の下手さや、性格の駄目な部分をいくらか思い知ることができ、改善のための努力を始められた点で良い一年だったと感じている。
2025年も絵が上手くなるように、絵を描き続けたい。以前は、良いまんがを描いて評価されたいという気持ちもあったけれど、ツイッターのアカウントを削除したとき、全部「もう良いや」と考えてしまった。今あるのは、たとえばBTRの主人公である「後藤ひとり」をより上手く、かわいく、幸せに、画面の中に現出させたいという気持ちだけで、それ以上はよく分からない。もちろんそのために評価されるための絵の技術をたくさん学ばないといけない。まんがもまた描けたらと思う。
読んだ本ベスト5
- はまじあき『ぼっち・ざ・ろっく!』1〜7
- ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア(浅倉久志訳)『たったひとつの冴えたやり方』
- 倉多江美『顔色が悪い!』「競馬場へ行こう!」
- 田山花袋『蒲団・幼きもの』
- ばるぼら『コミティア魂』
2025年の雛罌粟社活動予定
- まんが2作完成(ギャグとストーリー)
- 5〜6枚くらい1枚絵(イラスト)描く
- 「生前服」2記事更新